歯科医院においてもヒアルロン酸治療を受けることは十分に可能です。ボトックス治療と同様に、歯科医師は口腔内だけでなく、その周囲を支える顎顔面領域の解剖学的な構造に深く精通している専門家です。そのため、お口周りの機能改善や審美性の向上を目的としてヒアルロン酸を使用することが、歯科医師の業務範囲として認められています。

歯科で行われるヒアルロン酸治療の最大の特徴は、単に表面的なシワを消すことだけを目的とするのではなく、歯科治療の仕上げや、お口全体の機能回復と密接に関連させて行われる点にあります。以下にその詳細な目的とメリットを解説いたします。

歯科におけるヒアルロン酸治療の主な目的

まず一つ目に、ブラックトライアングルの改善が挙げられます。加齢や歯周病の進行によって歯ぐきが下がってしまうと、歯と歯の間に黒い三角形の隙間ができることがあります。これをブラックトライアングルと呼びますが、この部分の歯肉にヒアルロン酸を注入してふっくらとボリュームを出すことで、隙間を目立たなくさせ、見た目の若々しさを取り戻すことが可能です。

二つ目に、ほうれい線やマリオネットラインへのアプローチです。インプラント治療や入れ歯の装着、あるいは大規模な歯列矯正などによってお口の環境が劇的に変化すると、それまで目立たなかったお口周りのシワが強調されてしまうことがあります。こうしたシワに対してヒアルロン酸を補うことで、歯科治療後の整ったお口元をより美しく引き立て、トータルでのエイジングケアを実現します。

三つ目に、唇のボリュームアップやスマイルラインの形成です。審美歯科治療によって歯の色や形を完璧に整えたとしても、唇の薄さや縦じわが目立つと、笑顔の印象が十分に発揮されないことがあります。ヒアルロン酸を唇に注入することで、ふっくらとした魅力的な唇を形作り、歯との調和が取れた理想的なスマイルラインを作り出すことができます。

四つ目に、口角の挙上とトラブル予防です。口角部分にヒアルロン酸を注入することで、下がってしまった口角を自然に持ち上げ、明るく優しい表情を作ることができます。これは単なる審美目的だけでなく、口角の溝が深くなることで生じやすくなる口角炎の予防などの機能的な側面も持ち合わせています。

歯科医院で受けるメリットと注意点

歯科医院でヒアルロン酸治療を受ける大きなメリットは、歯と口元のトータルバランスを考慮できる点にあります。歯科医師は噛み合わせや歯の突出具合を精密に計算した上でデザインを行うため、笑った時の美しさが非常に自然になります。また、歯科医院は日常的に高度な局所麻酔を使用する場所であるため、注入時の痛みを和らげるための技術が非常に高く、痛みに敏感な方でも安心して施術を受けることができます。場合によっては、お口の中からアプローチすることで、お顔の表面に針跡を残さずに仕上げることも可能です。

一方で、注意点もいくつか存在します。歯科医師がヒアルロン酸治療を行えるのは、あくまで歯科口腔外科の付随業務として認められる範囲、つまり基本的にお口の周囲に限られます。おでこのシワや目尻など、お口の機能と直接関係のない部位は、美容外科や皮膚科の領域となります。また、ヒアルロン酸はもともと体内に存在する成分であり、時間の経過とともに自然に吸収されるため、効果の持続期間は半年から一年程度が一般的です。美しい状態を維持するためには、定期的なメンテナンスが必要となります。なお、歯科における審美や機能改善を目的としたヒアルロン酸治療は、原則として公的医療保険が適用されない自費診療となります。

このように、ボトックスが過剰な筋肉の動きを抑える引き算の治療であるのに対し、ヒアルロン酸は不足したボリュームを補い整える足し算の治療です。これらをお口の治療と組み合わせることで、より健康的で自信に満ちた笑顔を手に入れることができます。